
Show Notes
言語学的に正しい『メッセージ』とは?「宇宙人の言葉を理解すれば見える景色が変わるのか?」「ウォーフならこの映画をどう見るだろうか」など、監修の先生の考察も交えて話しました。
【監修者からの補足】 12:17 音声言語が線状性の制約に縛られているという点は、ヘプタポッドの言語においても同様です。原作「あなたの人生の物語」では、ヘプタポッドの言語には音声言語と書記言語の二種類があり、前者が線状性を持つのに対して、後者はそれを欠くとされています。厳密には音声言語と書記言語を区別して、我々の言語では、書記言語も単語が一定の順序で並べられるという点で、ある程度は線状性に縛られているが、ヘプタポッドの言語では、それから自由になっている、とすべきだったと思います。
13:20 ヘプタポッドの“文”の持つ、全体が同時に発される(始まりも終わりもない)、つまり時間に縛られていない点が、過去と未来を区別しない時間認識の仕方に影響している、という意味で言っていました。sequential iconicityと時間認識の関係については限定的だと考えています。
16:23 ヘプタポッドの言語がテンスを発達させる代わりに、アスペクトでそこをカバーしているとまでは考えていません。言いたかったのはあくまで、彼らがテンスの区別はしないものの、アスペクトの区別はしている可能性がある(全く時間的な違いを認識していないわけではない)ということです。
16:43 「Abbott is death process.」という文について、「process」が文法化しているのかもと言っていますが、ヘプタポッドの言語に、文法カテゴリーとしてのアスペクトがあるとまでは言えないと思います。だからこそ、そのような持って回った訳にしているのではないでしょうか。文法化したアスペクトの形式があるなら、「Abbott is dying.」のようなこなれた訳にしているはずです。ある言語において、特定の意味が区別できることと、それを表す形態論的な手段があることは、分けて考える必要があります。
【目次】 00:00 映画『メッセージ』は間違いだらけ 03:55 異言語を話す人とは分かり合えない? 11:15 『メッセージ』を時制から見る 18:21 過去・現在・未来を区別しない言語 23:04 宇宙人の言語の解読に必要な人材 35:41 ウォーフならどう見るだろうか
【参考文献のリンク】 ◯言語・思考・現実 https://www.valuebooks.jp/bp/VS0046010050 ◯あなたの人生の物語 https://www.valuebooks.jp/bp/VS0047975596
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【水野太貴プロフィール】 1995年生まれ。愛知県出身。名古屋大学文学部卒。専攻は言語学。本業は雑誌編集者。著書に『会話の0.2秒を言語学する 』(新潮社)などがある。Podcast「神保町で会いましょう」のパーソナリティも務める。 Twitter→https://x.com/yuru_mizuno 神保町で会いましょ う→https://open.spotify.com/show/6cYkvDO0HnJKLPgDBGUjjS
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17:35 収録後に思ったのですが、『~で見られる』と『~とみられる』はそもそも意味も要求する格も違うので、最大の相違点はそこでしたね。少し指摘ポイントがズレています。
【福田先生からの補足】 25:40頃からの「色を見ること・区別すること・分類すること」は異なるタスクであるという話と、26:55頃からの「言語は意識と無意識の境界線をずらす」という話について、少し補足します。 私たちが色を見るとき、脳ではさまざまな情報処理が行われています。例えば、色の違いを知覚することと、その情報をもとに「これは何色か」を判断することは、異なる段階の処理です。前者は比較的自動的・無意識的に行われる低次処理で、後者にはそれを統合する高次処理であり、より意識的な判断が関わります。 ここで面白いのは、言語がこうした処理のどの段階に影響するのかを調べることで、人間の認知の仕組みについて理解を深められるということです。例えば、言語によって色の区別のしやすさが変わるという現象があったとき、それが色を知覚する段階で生じているのか、それとも知覚した情報をもとに判断する段階で生じているのかによって、認知の仕組みについて異なることがわかります。動画中の「意識と無意識の境界線」という表現は、このように、言語の影響を手がかりにして、意識的・無意識的な認知処理の働きを探ることができる、という趣旨です。なお、言語相対性がいつでも意識的な認知処理にのみ現れるということはありません。 また、動画中では「言語が意識的」という表現も使われていますが、これはヒトが文法などの仕組みを意識して言語を使用しているという意味ではありません。むしろ、私たちは普段、言語の複雑な仕組みを意識することなく言葉を使っていますが、言語が認知一般に影響する際に意識的な部分への影響がよく見られるという意味です。この点については少し誤解を招く表現だったと思います。
【Quick Japan SPECIAL ゆる言語学ラジオ 完全攻略本】 https://www.valuebooks.jp/bp/VS0063378410